2018年02月18日

ミッドナイト・ジャーナル 本城雅人 著

【本の帯】

「被害者女児死亡」-世紀の大誤報を打ち、飛ばされた3人の記者。

7年後、児童連続誘拐事件が発生する。

さいたま支局の関口豪太郎はかつての事件との関連性を疑い、本社の遊軍記者・藤瀬祐里は豪太郎の応援に合流し、整理部員となった松本博史は冷めた目で静観する。

警察も、目撃者も、記者も上司も嘘をつく。

しかし豪太郎は、絶対に諦めない。

記者歴20年の著者が書き下ろす感動の社会派エンタメ!!

【読後感想文】

7年前にとんでもない誤報を発して、埼玉支局に飛ばされた新聞記者が主人公です。

7年前の事件とは、連れ去った女児を暴行した上に、殺して遺体を捨てるという事件でした。


7年後、主人公が飛ばされた先の埼玉で、またぞろ起こった女児連れ去り未遂事件。

目撃証言をつなぎ合わせると、7年前の事件が幽霊のように浮き上がってきます。


主人公は、同じ会社の上司や同僚とぶつかりながらも犯人に少しずつ迫っていくというベタなストーリーではあります。

しかし、筆力からなんでしょうかねえ。

読み始めると、片時も本を放せなくなりました。

もちろん一気読みです。


かつて「クライマーズ・ハイ」という日航機事故を題材にし、朝刊の締め切りと取材の信憑性を争った新聞記者を描いた小説がありました。

「64」という刑事ものの小説では過去の誘拐事件を追うあまりに、左遷された刑事の姿が描かれていました。

組織の中で葛藤する一匹狼の主人公。

捜査そのものは警察がしますが、その進捗状況を取材する側の物語です。

実に骨太で、しかもスピード感のある物語に仕上がっています。

重厚で迫力に富んだ小説ということも出来ます。

間違いなく、第一級の作品です。



今年の8月にTVドラマとして放映されるらしいので、楽しみに待っています。

出来たら映画化もして欲しいものです。

主人公を堤真一、その部下を長澤まさみと竹内涼真。

警察庁担当キャップに役所広司。

埼玉県警刑事部長に渡辺健。

犯人役は・・・・、むずかしいところでしょうね。




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2018年02月14日

木洩れ日に泳ぐ魚  恩田陸 著

【本の帯】

舞台は、アパートの一室。

別々の道を歩むことが決まった男女が最後の夜を徹し語り合う。

初夏の風、木々の匂い、大きな柱時計、そしてあの男の後ろ姿ー共有した過去の風景に少しずつ違和感が混じり始める。

濃密な心理戦の果て、朝の光とともに訪れる真実とは。

不思議な胸騒ぎと解放感が満ちる傑作長編。


【読後感想文】

全て一人称で書かれた小説です。

しかも、場面はアパート一室だけ。

登場人物は、明日朝は別れ別れになる若い男女。

男女が交互に自らの心の内を語りますし、相手の心を推量します。



その中身は1年前に起きた山岳ガイドの崖下転落事件について。

男女は、互いに相手が犯人の殺人事件だと思っています。

もう一つは、若い二人の過去と別れるに至ったこれまでの行き違い。

夜が明けるまでのノンストップです。


徐々にいろいろなことが明らかになってきます。

記憶の断片を互いにつなぎ合わせ、組み立て直せば別の世界が浮き上がってくるという手法です。

昔の探偵小説みたいです。



探偵は二人。

交互に、尋問するみたいな会話を交わし合うという設定が何とも言えません。

湊かなえの小説「告白」と似ています。

言葉だけ、想像だけ、記憶だけのやり取りですので真実は分かりません。

おそらく、「こういうことだろうな」という推測でしかありません。



あまりにも心理描写が複雑に絡み合うので、途中で飽きそうになります。

が、崖下転落事件の解明と男女の今後がどうなるかが気になってしかたがありません。

それで、一気に最後まで読んでしまいました。

ラストは、読者がいろいろ想像できるような描き方になっています。




posted by 田沼 at 05:26| Comment(0) | 読書のススメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月02日

寒い時はイオンで読書がいい

お寒うございます。

全国的な大型寒波の襲来のようですね。

ここ福岡も真冬の気候になっています。



マイナスの気温が出ては、もういけません。

寒がりの私は冬眠を決め込んでいます。

一日、二日は家の中でもいいんですが、だんだん飽きてきます。

運動も兼ねて、暖房の効いた施設へ移動です。


先ずはH・Cのコメリやナフコをうろちょろ・うろちょろ。

春からの菜園作業を妄想しながら1時間ほどの散策です。


20180123_130914.jpg

次は、イオンモール。

本屋を冷やかした後は、フードコートで読書の時間です。

昼食することもあるんですが、今日は読書のみ。

窓際は広くって、明るくって気持ちがいいです。

窓下の駐車場を眺めながらの読書というのも乙なもんです。


ここでも小一時間ほどを過ごしたら、健康センターにでも行ってきましょうか。

半径5km以内に5ケ所ほどありますので、より取り見取りということです。

風呂に入っている時間よりも、休憩室で寝ている時間の方が長いかもしれません。


かくして、寒い一日をだら〜っと暖かく過ごしたいという日記でした。

来週には気温も上昇するという予報です。

ジャガイモの苗を買ってきて、芽出しをしましょうか。

ブロッコリーなどの冬野菜を片付けて、ナス科の準備に取り掛かりましょうか。

もう春ですよ、春ですよ。




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2018年01月28日

棲月 隠蔽捜査7 今野敏著

【本の帯】

私鉄と銀行のシステムが次々にダウン。

不審に思った竜崎はいち早く署員を向かわせるが、警視庁生安部長から横槍が入る。

さらに、管内で殺人事件が発生。

だが、伊丹から異動の噂があると聞かされた竜崎はこれまでになく動揺していた―。


【読後感想文】

やっぱり「苦しい時の今野敏」という格言は生きていました。

久々に手に取った今野敏の警察小説です。


本屋の新刊コーナー前を通りかかって、ふと見つけました。

が、ちょっと躊躇しました。

最近、面白い本に出会わなかったもんですから。


主人公は変わり者の竜崎伸也署長。

原理原則で上の者にも下の者にもずけずけとものを言う御仁です。

キャリアのエリートなのに、息子の不祥事で引責降格されています。

今は所轄の署長なのに、階級が警視長という高級官僚です。

幼なじみは、警視庁の伊丹刑事部長。

やっぱりキャリアのエリートです。


変わり者の署長を取り巻く人々が、署長の言葉に呆れたり怒ったりします。

その姿が、このシリーズの一番の魅力になっています。

推理小説なんですから、犯人逮捕というストーリーと署長の人柄とが絡みながらお話は進みます。


基本的には署長室や捜査本部の中が場面になっています。

刻一刻と集まってくる情報を精査しながら、犯人に迫っていくという流れです。


先日に記事をUPした「孤軍」に似ていますが、終盤にしか犯人が分からないという点が決定的に違っています。

「孤軍」の場合は、犯人は分かっているのになかなか逮捕できないというお話で、同じ場面が何度もループします。


それに対して、本書はスピード感を持ってお話が推移していきます。

情報が集まるたびに犯人像が明らかになっていき、主人公が次から次に指示を出します。

署内の部下への命令に始まり、管轄外ひいては本庁の生活安全部やサイバー対策部へ・・・。


もう、指示系統も組織的な取り組みもあったものではありません。

荒唐無稽であることは分かっているんですが、そんな主人公のむちゃくちゃ加減が楽しい小説です。


1600円もするんですから、ゆっくりお見たかったんです。

が、惜しいことに一気読みしてしまいました。





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2018年01月22日

タスクフォースな刑事たち 孤軍

作者は、笹本稜平で、本の名前は「孤軍 越境捜査」


【本の帯】

警視庁特命捜査係の鷺沼と神奈川県警の一匹狼・宮野が難事件に挑む『越境捜査』シリーズ最新刊! 

六年前、東京都大田区で老人が殺された。

億単位の金を遺していたらしいが、見当たらない。

その後、連絡の取れない老人の一人娘が、警視庁の首席監察官と結婚していたことが判明。

すると、監察から鷺沼らに呼び出しがかかり、捜査に関して探りを入れられる。

権力側のキナ臭い動きに鷺沼らは……。


【読後感想文】

迷宮入りした事件を再捜査する・・・という魅力的なストーリーなんです。

が、なんでこの事件の再捜査を開始したのかが、もうひとつ曖昧模糊としていてはっきりしません。


本文に入ってからも、同じような場面の繰り返しで、途中で飽きてしまいます。

だって、警視庁内の会議室とか主人公の家とかで作戦会議ばかりしているんです。

現地捜査自体はチョチョイのちょいで難なく進んでいきます。

その結果、浮上してきたのが警視庁や警察庁のお偉いさん方。

お偉いさんと対峙するという正義感に満ちたストーリーのはずなんです。

相手は、刑事局次長だったり刑事部長や刑務部長という、いわばキャリア組のトップです。

ここが、ちょっと在り得ないですよね。

偉い人はみんな善人なんて言いませんが、警察のトップ全員が殺人事件に絡んでいるなんて荒唐無稽もいいところでしょう。

もともと小説は荒唐無稽なんですけどね。


敵の攻撃がもっぱら人事面による捜査妨害というのもいただけません。

ハードボイルドでもなんでもないじゃないですか。

主人公たちが命を狙われることはありますが、簡単に回避します。


「こうなったら、もう遠慮はいらない」

なんてセリフが、都合三度ほど出てきます。

「いつになったら本気を出すのよ」と思ってしまいます。


起伏や緊張感が乏しい警察小説でした。

チャンチャン。




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2017年12月14日

数年後は電気自動車が主流になるのか

アメリカはカリフォルニア州で、2018年に新たな排ガス規制が発動されるそうです。

「二酸化炭素の排出量が基本的に0になる」ことを目指す法案が数年前に可決され、いよいろ来年から規制がかかるという実在。


日本ではハイブリット車や水素自動車で活路を見いだそうとしていますが、それも近い将来には規制にひっかかるということです。

一つの州の規制が発動すると、アメリカ全土に広がる可能性があります。

今回読んだ本「デッド・オア・アライブ」(楡周平)は、そこに焦点化して物語を展開しています。


【本の帯】

巨大電機メーカー・コクデンは、自社技術の粋である新型電池の市場をEV(電気自動車)に探ろうとしていた。

一方、経営不振の軽自動車メーカー・イナズミの中にもEVへの動きが。

さらに、世界的自動車メーカー・タカバがEVへの戦略転換のため、そのイナズミを飲み込もうとしていたーー。

一気に世界中がEVに向けて走り出し、戦場と化した自動車業界の最先端を鋭く先読みしたビジネス・サバイバル・サスペンス!

【読書後記】

実に勉強になりました。

電気自動車はバッテリーの性能に難があって、走行可能距離が短いという欠点があります。

それで、実用化にはほど遠いように思われています。

開発に係る費用も、スタンドを整備する費用も莫大になる公算が大きいです。

それを自動車価格に上乗せしたら、数百万円もするということです。

高級車並みです。

そこまでして不便な電気自動車を買うユーザーなんかいないはずですよね。



もし、電気自動車が勢いを持ちだしたら・・・。

ここからが本書のストーリーです。

さて、日本の自動車メーカーはどうなるんでしょう。

ガソリン車に比べて部品数が、10分の一の電気自動車。
モーターは特殊な技術を要しないので、あらゆる業種の会社が参入してくることになるでしょう。

自動車を設計してその特許料だけで営業しようという会社が出てくるでしょう。

技術開発は他の会社に任せて、ボディだけの制作を請け負う会社が乱立するはずです。

組み立てメーカーを頂点にした日本の自動車産業の構造を崩壊しかねないという側面があります。

電気自動車が普及すればガソリンスタンドは倒産し、地方にはガソリンスタンドが少なくなります。

そうなると、さらに電気自動車への転換は一気に進むはずです。



世界の趨勢は待ったなしで進んでいます。



どこに活路を見いだすか。

そこに登場するのが世界一の普及率を示す軽自動車。

軽自動車のユーザーは、一日の走行距離の平均が40kmたらずだそうです。

それならば、今のバッテリーでも有効です。


地方では一家に一台の軽自動車が保有されていることもあります。

地方なら、少々高い軽自動車でも売れるはずです。

電気網は世界中で整備が進みつつありますから、新たにガソリンスタンドを整備するよりも安価に出来ます。

発展途上国においてなら、軽自動車も売れる公算が強いです。



一気に軽の電気自動車を量産できれば、シェアを握ることが出来ます。

部品の型式や充電システムのスタンダードを握ることができます。

新たなバッテリーが開発されたら、普通車への転用も可能になります。



これは、10年後の世界の話かもしれませんが、ものすごく大きなビジネスチャンスをはらんだストーリーです。

大手自動車メーカーや軽自動車の専門メーカー、弱小ベンチャー、家電メーカー、都市銀行、商社、政治家が入り乱れての展開は、スピーディーで波瀾万丈という感じです。


経済小説にありがちな難しい言葉は、いちいちタブレットで調べながらの読書となりました。

内容があまりにもおもしろいもんで、ついつい一気読みしてしまった次第です。


追伸

世界で排ガス規制が盛んに叫ばれた40年ほど前。

日本でも規制が発動されるようになりましたが、当時の大手自動車メーカーはすべて反対でしました。

しかし、弱小のホンダがシビックでCVCCエンジンを発表しました。

そうするやいなや、全メ−カーが排ガス規制適合車を我先に発表し出しました。

おそらく、電気自動車も同じように発展していくんじゃないでしょうか。


10年と言わず、数年後の話になるかもしれません。




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2017年12月08日

ねこ町駅前商店街日々便り

作者は柴田よしき。

【本の帯】

赤字ローカル線の終点・根古万知。駅前は、わずか八店舗ほどが細々と営業するシャッター商店街である。

数年前、猫の町「ねこまち」としてブームになりかけたこともあったが、それも一時のこと、以来、ジリ貧状態だ。

離婚を機に、そんな町に戻ったラーメン店の娘・愛美は、緑色の大きな目と灰色の毛が愛らしい拾い猫を飼うことになった。

ノンちゃんと名付けたその猫が、ひょんなことから一日猫駅長を務めると駅は再ブレイク、商店街にも観光客が訪れる。

愛美は久しぶりに賑わう光景を見て、今度こそ、元気いっぱいだった頃の根古万知を取り戻したいと動き出すが…。


【読書後記】

作者の名前を見て、ついつい手に取ってしまいました。

かつてはミステリー物を随分と読みふけったものです。


さて今回は、根古万知(ねこまんち)という町の商店街に一匹の猫が迷い込んだところから始まります。

この猫の登場とともに、街が活気づき、幾人かの人間関係が動き始めます。

しかし、この商店街はシャッター街。

近くにできたショッピングモールなどの影響で数年先には無くなりそうな商店街です。


その再生に立ち上がったのが、ラーメン店の娘と世界中を駆け巡っていたご当地出身のカメラマン・・・という訳です。


地域再生型の小説には、「プラチナタウン」や「限界集落」というのがありました。

私の好きなジャンルになっています。



本書を読んで、地域再生の勉強になりました。

錆びだらけのシャッターを見たら、誰しもが「どうにかしたらいいのに」「工夫さえすれば人は集まるはず」なんて思ってしまいます。

が、現実にはなかなか難しということが分かりました。


シャッターに絵を描いても、すぐに飽きられます。

本格的に再生しようとしても、街にはすでに資金力も労働力もありません。

店の改修費やアーケードの補修費、道路の整備費、イベント開催の費用等々の資金力がないんです。

商工会も自治体も銀行も、先細りの商店街には投資しないんです。


再生を始めても、売り手すなわちサービスの提供者がいないことには先に進めません。

イベント的に若い人を呼び寄せても、一過性のものでしかないようです。

加えて、店を止めた高齢者は余生を静かに送りたい、商店街がなくなったら企業に土地を売って便利なマンションででも暮らしたい。

店舗の上が住居なので、下でわいわい騒いでほしくない。

等々。

70代、80代になった商店主が、そんな風に思うのは当然のことかもしれません。



本書の面白いところは、まったくの再生を考えているのとは違うところにありそうです。

商店街が無くなってしまうことを食い止めることはできなくても、少しでもその時期を遅らせたい。

その間に、子どもや若い世代の思い出に残る商店街の姿を造りたい…そんな思いがあるようです。


不思議な猫の姿や山奥の限界集落の様子、UFO話などが交差して、柔らかな雰囲気の中でストーリーは進います。

悪人が一人もいない小説なんてはじめてでした。





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2017年11月19日

最後の証人 一発逆転を狙う弁護士の物語 

作者は柚月裕子。


【本の帯】

元検察官の佐方貞人は刑事事件専門の敏腕弁護士。

犯罪の背後にある動機を重視し、罪をまっとうに裁かせることが、彼の弁護スタンスだ。

そんな彼のもとに、殺人事件の被告人から弁護依頼が舞い込む。

高層ホテルの一室で起きた刺殺事件。

男女間の愛憎のもつれの末の犯行であり、物的証拠、状況証拠から有罪確実だとみられている。

しかし佐方の本質を見抜く勘が、事件の裏に何かがあると告げていた。

有罪必至の弁護を引き受けた佐方の勝算とは何か。

やがて裁判は驚くべき展開をみせる!

感動を呼ぶ圧倒的人間ドラマとトリッキーなミステリー的興趣が、見事に融合した傑作法廷サスペンス。

『このミステリーがすごい!』大賞受賞作家による、衝撃の話題作! 

【読書後記】

「検事の本懐」と「検事の死命」は、30歳の主人公、検事の佐方貞人のオムニバスストーリー。

先に発刊した本書「最後の証人」は42歳の主人公、弁護士の佐方貞人のヒューマン&サスペンスストーリーということになっています。


さえ、今回の事件、弁護側にとっては絶体絶命の事件。

検事の一方的優勢で裁判が進み、主人公はただただ尋問を聞いているだけの存在になっています。

どこかに起死回生の隠し玉があるあずです。



殺人事件がある夫婦の復讐劇であることは、裁判と並行して描かれる夫婦の回想シーンで明らかです。

読者は、主人公の一発逆転がいつ登場するかを楽しみにしながら、辛抱強く先を読み進めることを強いられます。


第一回公判、第二回公判と続き、最終弁論が近づくころになると、読者は考えさせられます。

「最後の証人」って誰だ?

二人考えられます。

一人目を選択したとしても一発逆転は難しそうです。

二人目、そう彼なら一発逆転に通じる大証言を得られるかもしれません。

そんな風に先読みするのも楽しい作品です。


「最後の証人」が登場してクライマックスに入る矢先に、作者は読者に張っていた罠を明らかにします。

これまで被告人と思っていた人物が被害者で、被害者と思っていた人物が被告人だったんです。

えっ!えっ!えっ!

なんじゃそりゃあ!・・てな具合です。

その後は、主人公の独壇場となって裁判は決心まで進みます。


さて、主人公には若く美しい事務官が付いていて、時々物語に可愛い姿を現します。

しかし、意外なことに彼女が物語の締めを飾るんです。

泣かせるようなセリフを吐くもんですから、思わず目頭が熱くなってしまいます。


本作品は、第一級のサスペンスでありヒューマンストーリーだろうと思います。




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2017年11月13日

検事の死命 柚月祐子

作者は第7回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、『臨床真理』にて2009年デビュー。

『検事の本懐』で2012年第25回山本周五郎賞にノミネート、2013年度第15回大藪春彦賞受賞。


【本の帯】

郵便物紛失事件の謎に迫る佐方が、手紙に託された老夫婦の心を救う(「心を掬う」)。

感涙必至!佐方の父の謎の核心が明かされる「本懐を知る」完結編(「業をおろす」)。

大物国会議員、地検トップまで敵に回して、検事の矜持を押し通す(「死命を賭ける」-『死命』刑事部編)。

検察側・弁護側ー双方が絶対に負けられない裁判の、火蓋が切られた(「死命を決する」-『死命』公判部編)。

骨太の人間ドラマと巧緻なミステリーが融合した佐方貞人シリーズ。

刑事部から公判部へ、検事・佐方の新たなる助走が、いま始まる!
【読書後記】

発刊した順で並べると「最後の証人」→「検事の本懐」→「検事の死命」となります。

しかし、主人公の時系列で並べると「検事の本懐」→「検事の死命」→「最後の証人」ということになる竹内貞人シリーズです。

スターウオーズシリーズのようです。

今回も基本的には短編のオムニバスなんですが、後半は長編のようになっています。


中心は、電車内で起こった痴漢事件、迷惑条例違反事件です。

微罪の事件ですが、主人公はこだわります。


容疑者すなわち加害者の家は旧家で地域の名士、国会議員にも手を回すことが出来るという設定。

痴漢の被害者は、補導歴を持つ娘と母親の単身家庭。

竹内検事には、検察上層部や地域の法相界から圧力が掛かります。


ひょうひょうした物腰ながら、強い信念に基づいて正義を正そうとする検事に支援の手がさしのべられます。

上司が助けます。

置換を捕まえた所轄の署長やその部下たち。

最後は上級官庁の検事正まで。

はたしてその結果は・・・・。


推理小説の形を取りながら、ヒューマンストーリーを巧みに描いた作品・・・ということになるのでしょう。



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2017年11月04日

検事の本懐 柚月裕子

【本の帯】

12万部突破の法廷ミステリー『最後の証人』主人公のヤメ検弁護士・佐方貞人の検事時代を描いた連作ミステリー、待望の文庫化です。


骨太の人間ドラマと巧緻なミステリー的興趣が見事に融合した連作短編集。
出所したばかりの累犯者が起こした窃盗事件の真実を抉る「罪を押す」。

県警上層部に渦巻く嫉妬が、連続放火事件の真相を歪める「樹を見る」。

同級生を襲った現役警官による卑劣な恐喝事件に、真っ向から対峙する「恩を返す」。

東京地検特捜部を舞台に、法と信義の狭間でもがく「拳を握る」。

横領弁護士の汚名をきてまで、約束を守り抜いて死んだ男の真情を描く「本懐を知る」。



【読書後記】


第25回(2012年)山本周五郎賞候補、第15回(2013年)大藪春彦賞受賞作というだけあって、中々読み応えのある作品でした。


主人公はボサボサ頭によれよれスーツの若者。

30歳になるかならないかの新米検事です。

派手さはないが、事件のポイントに接した時に見せる鋭い眼差しが印象的です。


短編集にありがちな薄っぺらなストーリー展開ではなくって、じっくり読ませて核心に迫るという流れに好感が持てます。

短編の前半部分に、事件のポイントが示されています。

必ず読者にも分かるようになっています。

そのポイントに徐々に徐々に迫っていく過程がたまりません。


人の心を法に照らして正義に導く主人公の言動にヒューマンストーリーを感じます。

ここが山本周五郎賞の候補になったり、大藪春彦賞を受賞するに至っ理由でしょう。

文章は柔らかく、しかも巧みで読者をグイグイ惹き付けます。

一話、一話を読み終わるたびに、満足感を覚えるという作品です。
  

第一級の探偵小説と言えるでしょう。

久々の☆5つです。


追伸

本作品は、佐方貞人シリーズの第2作目なんですが、時系列でいうと第1作目「最後の証人」の前の時代ということになります。

また、第3作目「検事の死命」も第1作目の前の時代ということになります。

すなわち、時系列で並べると、第2作目「検事の本懐」→第3作目「検事の死命」→第1作目「最後の証人」ということになります。

スターウオーズのシリーズのようです。

私は、時系列に沿ってシリーズを読み進めようと思います。



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2017年10月26日

二礼茜の特命 仕掛ける

作者は城山真一。

【本の帯】

『このミステリーがすごい! 』大賞受賞後、第一作!

内閣金融局の秘密部門S2に所属する二礼茜の仕事は、依頼人の“もっとも大切なもの”と引き換えに、経営危機に直面する会社に対して資金作りの協力をすること。

新たな依頼主である創薬会社のエヌメディックは、提携していた大手製薬会社が共同研究から撤退し、銀行から融資引き揚げの通告を受けている上、株価が乱高下したことで、インサイダー情報が漏れていた可能性まで噂されていた。

茜は「インサイダー取引にかかわった人間を特定すること」を条件に、株取引を開始する。

しかし、大型株の市場ではヘッジファンドなどが操る自動売買システムが高速取引で相場を牛耳っていた……。

果たして、茜は巨大アルゴリズム取引に勝つことができるのか?


【読書後記】

ずいぶん昔、「ハゲタカ」という投資ファンドグループの戦いを描いた作品がありました。

敵対的買収や白馬の騎士、トロイの木馬等々、企業買収にかかる隠語が飛び交った作品でした。

理解できない株取引の文言に閉口しました。

それと同時に、株取引の裏側を覗いたような気分にもなれました。

素人が手を出す領域ではないと確信したものです。

また、あの世界で生きている人たちの苦悩にも触れることが出来ました。

ちょうどライブドア事件?が勃発した頃でした。


さて、今回も株の取引き、デイトレードという場面が頻繁に登場します。

内容に関してはほぼチンプンカンプンでしたが、ハゲタカ同様に勉強になりました。

今の株取引は、システム化されていて人間が入り込む余地が非常に狭まれているようです。

1秒間にものすごい数の売り買いが成立するそうですから、やっぱり素人が手を出す領域ではなようですね。


ストーリー自体にワクワクする点は少ないですが、小説仕立てで株取引の勉強ができますので一読の価値がありそうです。



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2017年10月17日

ワルツを踊ろう 中山七里

【本の帯】

職もカネも家もないあぶれ者に、生きる術はあるのか。

中山七里史上、最狂・最悪のどんでん返しミステリ


職を失い20年ぶりに帰郷した了衛を迎えたのは、7世帯9人しか住まない限界集落だったーー。

住んでいるのは、詮索好きな地区長、生活保護費でパチンコ三昧の老人、村八分にされた一家……。

閉鎖的な村で自分の居場所を確保しようと、溝端了衛は資産運用相談会や村起こしのための共同事業などを提案する。

だが住民から返ってきたのは、嘲笑と敵意ーー。

愛するワルツの名曲“美しく青きドナウ”を通じ、荒廃した村を立て直そうとするが、了衛の身辺で、不審な出来事が起こりはじめ…。

追い詰められた了衛がとった行動とは!?

【読書後記】

以下は、あくまでも浅学な爺ちゃんの独断と偏見に満ちた感想です。


「中山七里史上、最狂・最悪のどんでん返しミステリ」という言葉にだまされました。

だって、中山七里という作者名と「どんでん返し」とくりゃあ心惹かれますよねえ。


しかし、早い段階からストーリーが見えていました。

不審な出来事の犯人は誰なのか。

一番怪しくない人間が犯人だ・・という昔からのセオリー通りの展開です。


ダラダラと同じような出来事が続きますし、主人公のキャラにも魅力を感じません。

単なる落ちこぼれで、勘違いから問題を引き起こす都会人。

外資系の企業に勤めていた39歳という設定なのに、やることなすこと十代のフリーターです。


ワルツが殺人のBGMのように流れるんですが、地獄の黙示禄という映画のパクリなんでしょうか。

連続殺人の描き方は、八墓村のパクリとしか言いようがありません。

その部分のページは一気に飛ばし読みしました。


それでも読者は「最後のどんでん返し」に期待して読み進めたんです。

それが、それがですよ。

通り一遍の謎解きなんです。

犯人は最初っから分かっていたのに、いきなり数ページで終末です。

「いつか罰を受けるでしょう」的な終わり方では満足できません。


中山七里からの撤退を決めました。




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2017年10月10日

孤狼(ころう)の血 柚月裕子

【本の帯】

常識外れのマル暴刑事と極道の、プライドを賭けた戦い。

作家、マスコミほか多くの賞賛を集めた、圧巻の警察小説。

緻密な構成、卓抜したリアリティ、予期せぬ結末。いやあ、おもしろい。正統派ハードボイルドに圧倒された。

ーー黒川博行氏(作家)

日本ミステリ史に残る、今世紀最高の悪徳警官小説だ。

ーー茶木則雄氏(書評家)

昭和63年、広島。

所轄署の捜査二課に配属された新人の日岡は、ヤクザとの癒着を噂される刑事・大上のもとで、暴力団系列の金融会社社員が失踪した事件の捜査を担当することになった。

飢えた狼のごとく強引に違法行為を繰り返す大上のやり方に戸惑いながらも、日岡は仁義なき極道の男たちに挑んでいく。

やがて失踪事件をきっかけに暴力団同士の抗争が勃発。衝突を食い止めるため、大上が思いも寄らない大胆な秘策を打ち出すが……。

正義とは何か、信じられるのは誰か。

日岡は本当の試練に立ち向かっていくーー。

血湧き肉躍る、男たちの闘いがはじまる。



【読書後記】


「仁義なき戦い」の流れで「県警対組織暴力」という映画がありました。


アウトローの刑事役を菅原文太、県警のエリートを梅宮辰夫が演じたハードボイルド作品。




本作品もあの感じかな?と思えます。


ボロボロになりながらのハードボイルド作品です。


先輩刑事の言葉で「暴力団はなくなりゃあ、せんよ。・・・・やりすぎた外道を潰すだけでええ」というのがあるんですが、このセリフが妙に印象的でした。




暴力団担当の刑事でありながらヤクザとのコネを使って、親分衆を訪ね歩くベテラン刑事。


悪徳刑事なんですが、どうしてもヤクザの抗争を止めたいんです。


市民を守るためには手段を択ばないんです。


周辺にも魅力的なキャラがいっぱいです。


先輩刑事のやり方に疑問を感じながらも、次第に尊敬の念を抱いていく新米刑事。


しっとりと落ち浮いてはいるものの、修羅場を生き抜いてきた小料理屋の女将。


荒くれ物の暴力団担当の刑事たち。


いずれは広島を束ねるであろう弱小組織の若頭。



ラストまで一気呵成にそれぞれの役割を担って、魅力的なキャラたちがストーリーを進めていきます。




日本推理作家協会賞に輝くのにふさわしい作品でした。


既に映画化の予定があって、アウトローのべテラン刑事に役所広司、正義感の強い新米刑事に松坂桃李、小料理屋の女将に真木よう子というキャスティングらしいです。


観たいですね。





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2017年10月02日

マスカレード・ナイト 東野圭吾

【本の帯】

若い女性が殺害された不可解な事件。

警視庁に届いた一通の密告状。

犯人は、コルテシア東京のカウントダウンパーティに姿を現す!?

あのホテルウーマンと刑事のコンビ、再びーー。


【読書後記】

マスカレード・ホテル、マスカレード、イブに続くシリーズ第3弾。

マスカレード・イブの発刊から2〜3年がたったように感じます。

その間、期待が大きく膨らんで、爆発しそうな時期に手にしたマスカレード・ナイトでした。


初めて接する人には、ホテル内の人の思いや様子が詳しく出てきますので、期待していいと思います。

3度目の私にとっては、期待があまりにも大き過ぎたようです。

おやっと思うくらいにあっさりとしたストーリーに感じました。

特にコンシェルジュに無理難題を申し付ける客の正体は、前半部分でほぼ分かりました。


何のヒントもなく関係者の回想で謎解きが行われるのにも違和感を覚えました。

大昔の探偵小説のようでした。


刑事とコンシェルジュのコンビが事件を解決するという前触れでしたが、?が10個ほど私の頭の上を回っています。

そんなシーンはなかったように感じました。

事件をめぐって、二人が絡むシーンは無かったです。

二人の仲が恋話に発展するのかなとも期待していたんですが裏切られました。


このシリーズからは、撤退することに決定です。

東野圭吾からも撤退することにします。





posted by 田沼 at 05:30| Comment(4) | 読書のススメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月24日

機龍警察 狼眼殺手 月村了衛

【本の帯】

経産省とフォン・コーポレーションが進める日中合同プロジェクト『クイアコン』に絡む一大疑獄。

被害者の一人が特捜部が追う馮グループの要人で、疑獄事件の疑いもあることから、捜一、捜二、特捜部の合同捜査となる。

何者かによって関係者が次々と殺害されていく。

警察内部の軋轢を嘲笑うかのように、事件は全く別の様相を見せる…… 。

謎の暗殺者に翻弄される警察庁。

事態はさらに別の様相を呈し始める。

追いつめられた沖津特捜部長の下した決断とは?

生々しいまでに今という時代を反映する究極の警察小説シリーズ、激闘と悲哀の第5弾。


【読書後記】

とにかく複雑で、凡人には頭が痛くなるような作品でした。

先ず、警察組織です。

特捜部(架空組織)が主役で、次いで刑事部の捜査一課と捜査二課、公安の外事二課、組織暴力対策部、警備部等々が入り乱れます。

これが互いに反目し合う間柄。

警察庁や検察庁、国税局などのお役所が権力闘争をおっぱじめます。


警察内の階級もいっぱいです。

警視監、警視長、警視正、警視・・・等々。

同じ階級でも、先輩か同期か後輩かで人間関係が複雑に絡み合います。

さらに、中国マフィアと日本国内の秘密組織が三つ巴に参戦します。

登場人物を覚えるだけでも一苦労です。

いえ、覚えきれません。

前のページを何度も見返しました。


殺人事件の捜査なのか、疑獄事件なのか、公安事案なのか・・・もう大変です。

おまけに、特捜部にはSFまがいのアサルトスーツを着込んだ攻撃隊員までいるんです。

3人の隊員は、北アイルランドの元テロリスト、元ソ連軍人、元刑事という変わり種。

これが、ハンドガンはもちろんアサルトライフルからショットガンまで自由に使用します。

日本国内でです。


今回の悪役は北アイルランドのテロリスト。

日本のプロジェクト事業の要人を次々に暗殺します。

凄腕の殺し屋なんです。

迎え撃つ特捜部…といった感じでしょうか。


もう、内容がてんこ盛りです。

むちゃくちゃです。

むちゃくちゃだから面白いのかもしれません。

アクションシーンは、アメリカ映画のように派手派手です。

打って打って打ちまくると言っても過言ではないくらいです。


長編ですので、一気読みしないと登場人物や物語の複雑さに負けてしまいますよ。



追伸

東野圭吾のマスカレード・ナイトを読み始めました。

次回を乞うご期待!というところです。



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2017年09月14日

祈りの幕が下りる時 東野圭吾

【本の帯】

悲劇なんかじゃない。

これが私の人生。

加賀恭一郎は、なぜ「新参者」になったのかーーー。

明治座に幼馴染みの演出家を訪ねた女性が遺体で発見された。

捜査を担当する松宮は近くで発見された焼死体との関連を疑い、その遺品に日本橋を囲む12の橋の名が書き込まれていることに加賀恭一郎は激しく動揺する。

それは孤独死した彼の母に繋がっていた。

シリーズ最大の謎が決着する。

吉川英治文学賞受賞作。

【読書後記】

まさに、フューマンストーリー。

そして、どうしようもなく悲しくなるラストでした。


本作品は、福祉施設に勤める中年女性が昔なじみを東京に訪ねた時から始まります。

訪ねたことによって発生する殺人事件なんです。


この流れは、古くは「飢餓海峡」や「砂の器」「人間の証明」を思い起こすことができます。

「天河伝説殺人事件」というのもありましたね。

訪問した者の思いと訪問された者の思いにギャップがあり、これが連続殺人事件の引き金になります。


そういえば、「新参者」や「麒麟の翼」も思いのズレから殺人事件が起こるんでしたよね。

全てが明らかになった時に、どうしようもなく悲しくなるストーリーです。


殺人事件は、主人公の母親が残したメモに繋がりがありました。

10年も前に死んだ母親でした。

しかも、息子を捨てて出て行った母親は長年の一人暮らしの末の孤独死でした。

何故、息子を捨てたのか。

現代の殺人事件を解き明かすと、母親の失踪と孤独死の謎が解けそうです。


さらに、何故主人公は警視庁捜査一課を離れて、日本橋署に転勤して新参者になったのか。

その謎も追って、30年前まで遡る刑事たち。


1985年の『放課後』、1999年の『秘密』、2006年の『容疑者χの献身』、2012年の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、2013年の『夢幻花』に、勝るとも劣らない納得のヒューマンストーリーです。

文句なしの☆5つ。



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2017年09月07日

回帰 困った時の今野敏

本屋に行って、読みたい本が見つからなかったら、今野敏の本を買うようにしています。

ほぼハズレがないようです。

これを称して「困った時の今野敏」

私にしか通用しない合言葉です。

【本の帯】

これは日本で初めて起こったテロ事件なのか?

事件は現場ではく会議室でも起きている!!

捜査と家庭に追われる刑事の奮闘を描く、シリーズ最新作!!


四谷にある大学の門近くで自動車の爆発事故が起こった。

死者と怪我人を出したこの爆発は、やがて「爆弾」が仕掛けられていたことが判明する。

警察はテロと断定し、警視庁刑事部捜査一課の樋口顕は情報収集に動き出すが、

上司である天童隆一管理官から「かつての部下、因幡が『テロを防ぎたい』という
電話をかけてきた」と打ち明けられる。

国際テロ組織に入った噂のある因幡からの電話は、今回のテロとの関連するのか?

そんな最中、樋口の娘・照美が、バックパッカーで海外旅行に行きたいという。

公安も捜査に乗り出す中で、テロ捜査と家庭の間で奮闘する樋口は何を思うのかーー。

【読書後記】

「困ったときの今野敏」はハズレていませんでした。

かつては、東野圭吾がそうだったんですがね。

最近は、今野敏が一押しです。


さて、今回の舞台は、爆発事件の捜査です。

大きなテロの前哨戦と思われるこの爆弾事件。

事件が進行中ですので、捜査本部ではなくって指揮本部が舞台です。

そこに公安部の捜査官が乗り出してきます。

公安部と刑事部の対立を描くのは、警察小説のセオリーです。

その間に帰国したテロ組織の一員と思われる元刑事も絡んできます。

三つ巴の対立とテロ捜査が指揮本部で展開します。

かつて「事件は会議室で起こってるんじゃない。現場で起きてるんだ」と叫んだのは、踊る大捜査線でした。

本作品は、外の捜査員から上がって来る情報をもとに、指揮本部の管理官席でのやり取りを中心に書かれています。

いわば「事件は会議室で推理しているんだ」という訳です。


容疑者が二転三転。

協力者なのか、捜査のかく乱か。


さらにさらに、主人公の家庭問題までもが勃発しますので、大混乱です。


会話文が多く、スピーディーに話が展開しますので、一気読みは間違いなしです。

秋の夜長を楽しむにはもってこいの一品です。




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2017年09月01日

深淵の覇者 数多久遠(アマタクオン)作

【本の帯】

尖閣諸島に中国駆逐艦「石家荘」が接近、日本政府は海上自衛隊護衛艦「あきづき」を派遣した。

中国国内の政治情勢悪化にともない、両国の情報戦が激化している矢先のことだった。

一方、新型ソナー兵器開発に携わる海自技官木村美奏乃は、五年前に潜水艦事故で亡くなった婚約者の死の謎を追っていた。

やがて、「あきづき」が魚釣島近海で消息を絶ち、緊迫する東シナ海へ、わが国初の女性首相御厨は、新型ソナー兵器を搭載した潜水艦「こくりゅう」投入を決定。

木村も乗艦することになったが…。

緊迫する日中関係はどうなるのか。

婚約者の命を奪った事故の真相とは?沖縄トラフの海中を舞台に、最先端技術と頭脳を駆使した熾烈な戦いを圧倒的迫力で描いたミリタリー・サスペンスの傑作!


【読書後記】

自衛隊のステルス潜水艦と中国の高速潜水艦の息詰まる海戦です。


潜水艦ものの映画で思い出すのは、「眼下の敵」、「レッド・オクトーバーを追え」なんかが有名ですね。

日本にも素晴らしい作品がありました。

かわぐちかいじ原作の「沈黙の艦隊」(アニメ)や福井晴敏の「終戦のローレライ」(小説)が圧巻でした。

潜水艦を巧みに操る艦長の姿。

戦略の見事さに度肝を抜かれたことを思い出します。


本作品も、やはり戦略の見事さが光っています。

潜水艦の性能を熟知しているからこそできる攻撃の在り方。

敵の潜水艦の艦長の思惑。

日本と中国の政治バランス。

海面下の前線で直接対峙する潜水艦乗組員の思い。

海自と空自の連携による領海権の確保。

自衛隊が抱えている問題点。

等々を余すところなく描き切っています。


一気読みしてしまう名作のセオリーも生きています。

「はじめちょろちょろ、なかぱっぱ」です。

一見なんでもないストーリーが続く導入。

小さな出来事が繋がり、謎が解き明かされる中盤。

ラストにみなぎる緊張感とスピード感。


リアル感いっぱいの筆力に圧倒されました。




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2017年08月19日

土漠の花 ソマリアの自衛隊脱出作戦 

作者は月村了衛。

【本の帯】

ソマリアの国境付近で活動する陸上自衛隊第一空挺団の精鋭達。

そこに命を狙われている女性が駆け込んだ時、自衛官達の命を賭けた戦闘が始まった。

一人の女性を守ることは自分達の誇りを取り戻すことでもあった。

極限状況での男達の確執と友情。

次々と試練が降りかかる中、生きて帰ることはできるか? 

一気読み必至の日本推理作家協会賞受賞作!


【読書後記】

「一気読み必至」という言葉につられて、買ってしまいました。

結果は、まさに一気読み。

久々の満足を感じさせてくれました。

第一級のノンストップアクションです。


アメリカ映画に何度か登場した設定ではあります。

大軍に包囲された小隊が、決死の脱出を試みる・・・というストーリーです。

その絶体絶命の状況に日本の自衛隊が遭遇してしまったんです。

交戦規程等々の難しい問題が生じます。

しかし、交戦規定も外交交渉も目の前で失われていく命の前では、何の助けにもなってはくれません。

生と死が隣り合わせに存在する前線の自衛隊。

今の日本の状況や自衛隊の在り方等への問題提起があるように感じます。



さて、この小隊。

隊員のそれぞれに生活があり家族があります。

過去もあれば、悩みもあります。

そんな人間らしい姿があちこちに描かれています。


そして、陸上自衛隊第一空挺団の精鋭達ですから、ずば抜けた能力を持っています。

射撃の名手、爆発物の専門家、元自動車修理工等々。

それらの能力が小隊の脱出に、危機一髪のシーンに発揮されます。


一人減り二人減りしながら、生き残った隊員たち。

ボロボロになりながらも、散っていった仲間たちの為にも生き残ることを決意します。


物語の全編にソマリアの現状や自然が、どうしようもなく悲しく描かれています。

大国のエゴをもとに起こされる部族間の紛争。

厳しい自然との共生。虫けらのように命を奪われていく人々。
ここにも、作者の問題提起を感じずにはいられません。


しかし、堅物の物語なんかで日本推理作家協会賞は受賞できません。

第一級のアクション巨編であり、冒険小説と言っていいでしょう。

息つく暇もなく一気読みしてしまいました。


久々の☆5つ。 



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2017年08月10日

暗闇のマリア 真保裕一

【本の帯】

相次ぐ自殺の謎

警察庁に作られた特命捜査班

夫は何をしていたのか……

真相はどこにある? 

一気読み間違いなしのノンストップ・エンターテインメント

===
夫は自殺ではない、殺されたのだ。

警察から連絡を受けて、富川真佐子は呆然となる。自殺の状況は完璧にそろっていた。

でも、絶対に違う。夫は死を選べるような人ではない。

この自殺の背後には、きっと何かあるーー。真相を探る孤独な闘いが始まった。

警察庁では、真佐子から相談を受けた元刑事の井岡が、内密に過去の事件を調査していく。

次々と明らかになる不可解な自殺……。

もし、自殺大国と言われる日本で、多くの「偽装された死」があるとしたら?

ついに二人は謎の鍵を握る男の存在にたどりつく。が、彼はすでに異国の地で死んでいた!?

闇にうごめく暗殺者は、なぜ生まれたのか?

国際的スケールで展開する極上エンターテインメント!

【読書後記】

作者に文句なし。

決して期待を裏切らない人ですよね。

それ以上に、本の帯にある「一気読み間違いなし」というキャッチコピーにもつかまってしまいました。

ストーリーは、何気ない日常から徐々に舞台が広がって行きます。

緊迫感やスピード感も読み進める内にどんどん高まってきます。

刑事と殺された官僚の妻が、それぞれに過去を探っていきます。

そして、それぞれにある男に到達します。

それからのスピード感は超特急です。

まさに、一気読みというところでしょうか。

「砂の器」や「人間の証明」を思い出しました。




posted by 田沼 at 09:04| Comment(0) | 読書のススメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする